100年前の本なんだけど、正直とても面白い。「科学的」で誤解してたけど、客観的って意味だった。現場作業者だけだと最大限の最適化が出来ないから、客観的な第三者を入れましょう。それをマネージャがやりましょうって話。中間管理職の仕事が明確に定義されているのがすごい。「科学的」というのは、技術者10人対管理者では技術に関して技術者10人の方が優れてる。だから計測して評価して根拠を持たないと、管理者は技術者に技術指導できない。「世の中の中間管理職の全員がこんなことできるか?」って言ったら全員は絶対無理だと思う。テイラーとかギルブレスとか一工員から始めてこんな手法まとめちゃうとか頭よすぎ。
目次
- 序章 本書の狙い
- 第1章 科学的管理法とは何か
- 第2章 科学的管理法の原則(「科学的管理法」以前における最善の手法
- 科学的管理法のエッセンス
- 銑鉄の運搬作業における取り組み
- 私の職歴―マネジメント改革に傾注した背景
- シャベルすくい作業の研究
- レンガ積みにおける検証
- ベアリング用ボールの検品に対する考察
- 高度な金属切削業務における探究
- 科学的管理法の実践)
現場改善
現場改善の例に「ギルブレスのレンガ積み*1」が出てくる。これは山田 日登志さんがやってることに非常に近い。
- 今やってる作業に、これこれの変更を加えなさい。
- 変更前の生産速度と、変更後の生産速度を計測して見せる。
その後、「現場で改善を続けなさい」と言うか、「改善は管理者の責務だ」と言うかの違いが面白い。面白いけどなぜ違うのかよくわからない。
- 状況が80年くらい違うのでテイラーが言う管理者は現場のリーダに相当している?実際は同じ人を指してる?
- 日本では労働者と経営者の信頼関係が成り立っているので、報酬を変更する権限を持つ管理者が間に立たなくてもいい?
- 全管理者が科学的管理法ができるわけないので、現場だけでやってしまえ?
マクドナルド
科学的管理法の活用具合ではマクドナルドが超すごい。
- 本部で計測して最速メソッドを作る
- 教育は現場でやらせる*2。
責任分担が明確。評価は生産速度じゃなくて技能で評価するのだけど、受注生産向けのアレンジかな?それでも名ばかり管理職問題があるっていうのが、世知辛い。店長がプレイングマネージャーになってるからで、プレイングマネージャーの作業効率を客観的に評価する人は居ないから、自然と働き過ぎになる。店長をマネージャー面で教育してプレイから足を洗わせる必要があるんだろうけど、その辺どうなんでしょうね?
ソフトウェア業界
卑近な例で、ソフトウェア開発の分野を考えると。科学的管理法はまったくやってないように思える。テイラーが科学的管理法以前のやり方と言っている「自主性とインセンティブを中心としたマネジメント」をやってる。残業した方が効率がいいのどうか、誰も管理してない。だから残業はなくならない。 少なくとも、残業をしない方が良いと主張する人はたくさんいる*3。けど、実際に計測してみたって話はほとんど聞いたことが無い。毎回違うものを作るので生産性が計れないという理由をよく聞くのだけど、ピュアアジャイルならベロシティとして計測できる可能性がある。夢があるね。ソフトウェア工学の人はもっとアジャイルの生産性が高いか低いかじゃなくて、アジャイルなら定性的な評価が可能って意味で注目すべきだと思うな。べロシティの話は「アジャイルな見積りと計画づくり」を読んでね。