@ledsun blog

無味の味は佳境に入らざればすなわち知れず

はたらく魔王さま

原作未読。アニメのみの感想

あらすじ

舞台は「指輪物語」のような剣と魔法のファンタジーの世界
そこに君臨する魔王が勇者に破れ現代日本に逃げてくる
魔力も腕力も失った魔王様は生活のためにアルバイトに勤しむ

時代性

ライトノベルライトノベルたる最たる理由は時代性です。

設定は剣と魔法のファンタジーのパロディ*1ですが、 魔王と天女と考えれば物語の構造は羽衣伝説*2のパロディです。 羽衣伝説のパロディとして考えれば、この作品の持つ時代性は現世との繋がりが婚姻から雇用に置き換わっている点です。

現代のライトノベルの主要な読者にとっては婚姻よりも雇用のほうが社会との繋がりを感じられそうです。 面白いアイデアでした。

その他の点もほめる

優れたアイデアをライトノベルの様式美で飾ったすばらしい作品です。

  • 魔王以外の複数の登場人物の視点で語られている*3
  • いろいろな美少女とキャッキャウフフする*4
  • 正義を守る権力構造の腐敗というサスペンス要素*5
  • 困ったときになぜか魔力が復活するご都合主義展開*6

近江国風土記 より

古老伝に曰く、近江国伊香郡与胡郷の伊香小江(いかご の おえ)は、郷の南にあり。天の八女(やおとめ)、ともに白馬となり、天より降りて、江の南の津で浴す。伊香刀美(いか とみ)西山に有りて、遥かに白鳥を見る。その形奇異なるによりて、もしやこれは神人かと疑いて、住き是を見るに、実に神人なり。是に於いて、伊香刀美即ちに感愛を生じ、環去するを得ず。窃(ひそか)に白犬をやり、天衣を盗み取り、弟の衣を隠し得たり。天女、これを知り、その兄七人、飛びて天上に去る。その弟一人飛び去るを得ず。天路、永く塞がり、即ち地民となる。天女の浴せし浦を、今神浦という。伊香刀美、天女の弟女と、ともに室家をつくり、此れに居て、遂に男女を生む。男二人、女二人にして、兄の名を恵美志留(オミシル)、弟の名を那志等美(ナシトミ)、女の名を伊是理比咩(イセリひめ)、次女の名を奈是理比咩(ナセリひめ)という。これ此の伊香連等の先祖なり、後に母天の羽衣を捜し取り、着て天に昇る。伊香刀美、独り空床を守り、嘆詠断えず。 *7 http://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E8%BF%91%E6%B1%9F%E5%9B%BD%E9%A2%A8%E5%9C%9F%E8%A8%98

*1:ファンタジーはイザナギ、オルペウス以来、主人公が異世界を旅して帰ってくるのが王道です。

*2:羽衣伝説は何パターンかありますが、ここでは近江風土期のものを指す。 天女の羽衣を盗んで帰れなくし嫁にする異類婚姻譚

*3:たとえば神話や児童文学は一人の視点です。

*4:イケメンが美女とイチャイチャするのは源氏物語以来の日本文学の伝統ですが、高橋留美子が「うる星やつら」で現代に蘇らせ、赤松健が「ラブひな」で様式美として完成させました。

*5:魔王が思ったほど悪人じゃなくて、勇者の所属する教会組織に胡乱なところがあるなどの件。踊る大捜査線と相棒劇場版あたりで手かが付いて辟易しているのであまり前面に出さなくて正解だと思います。

*6:水戸黄門の印籠と一緒。物語にはカタルシスが必要、窮地に陥って最後は主人公側が勝つのは必然です。

*7:弟、兄とあるけど天女の性別は女です。