@ledsun blog

無味の味は佳境に入らざればすなわち知れず

むかしむかしの たかしとかあさん

むかしむかしあるところにたかしとかあさんが住んでいました。たかしは町へ行きプログラムを書いて暮らしていました。


今日はちりめん問屋の橘屋さんのお仕事です。
「よく来たね、たかし。今日は天気が良いね。このプログラムを直してほしいんだ。」
「どれどれ、ちょいと見せてくんな。おっと、こりゃ・・・!?」
そのプログラムは10年前にたかしが書いたものでした。たかしは昔から勤勉な青年でした。プログラムにはちゃんとコメントで実現したいことを書いてあり、すぐに何のプログラムかわかりました。
「こりゃ消費税の計算プログラムだよ。こんな古いもんを一体どうしようってんだい?」
「いやいや古いったって今でも立派に動いているさ。ほら、今度お上が消費税率を上げるって言うだろ、だから直してもらおうと思って」
「なんだいそんなこと。この税率定数を修正すりゃすぐ終わりだよ。で、いつなんだい税率が上がるのは?」
「来年の春と3年後の秋の二回さ」
「なんだって!?」
「どうかしたのかい?」
「いやなに、税率適用のスケジュールが一回しか組めないんだよ。二回組めるように改造すりゃいいだけど、月締めスケジュールにも使っているもんだからさ」
「なんだい月締めで使えるなら、12回組めるんじゃないのかい?」
「いや月締めたって、締め終わったところで翌月頭のスケジュールをもう一回入れてるだけなんだよ。」
「ずいぶん複雑なんだねぇ」
「そんなわけだから、どうやって修正するか一回帰って考えみらぁ。ソースコード一式印刷してっていいかい?」
「いくらでもやってくれてかまわないよ」


たかしは橘屋を出て、町を出て、人影もまばらな田圃道をあーでもないこーでもないと考えながら歩いて帰りました。悩むちに日は暮れ、晩御飯の時間になっても、印刷したソースコードとにらめっこを続けています。そんなたかしを見てかあさんは
「たかしや、ご飯のときくらいやめられないのかい?」
「いやね、これがなかなか難問でよ、解けそうで解けないんだ」
「あとで一緒に見てあげるから、まずはご飯をお食べ」


ご飯を食べ終わり一息ついたところで
「ちょっと見てもいいかい?」
かあさんは老眼鏡を外してソースコードを見始めた。
「ずいぶんきれいに書いてあるじゃないかい。コメントもしっかりしているし、これならどこを直すかすぐにわかるんじゃないのかい?」
「それがよ、直すところは分かるんだ。けど、なんでこんな作りになっているのか分からなくて、直すになおせないのさ。」
そしてたかしはスケジュールが一段しか組めないことを説明し始めました。
「多段に拡張するぐらいわけないんだよ。それが月締めじゃこんな回りくどいやり方をしている。なんでか?」
「そういう時はね。コメントに設計上の判断を書いておくと良いんだよ。『○○しようと思ったけど、デメリット××があったからやめました。』とかね。コメント以外には何か残ってないのかい?」
「そういや日記を見たらなんか書いてあるかもしんねえ。ちょっと見てみるよ、ありがとよかあちゃん。」
そして自分の部屋にこもり、日記をあさり始めました。


あくる朝朝ごはんの用意をしていると
「かあちゃん、わかったよ。ありゃただの面白半分だ。何のことはねぇ、直しちまえばいいのさ。今日はさっさと仕事片づけて、土産にうめぇ魚買ってくっから楽しみにしててくれ。じゃあ、ちょっと行ってくるよ。」
というや、たかしはそそくさと出かけていきました。

おしまい