要約
なぜ憎しみを抱くのか
- 幼少期は親が居なくては生きていけない
- 自分の感情と親の意向が矛盾することがある(お腹が空いて泣くvsうるさい)
- 生きるために親の意向を尊重する
- 親の意向と矛盾する自身の感情を良くないものとして認識する
- 感情豊かな人を見ると、自身の感情を思い出す。抑えられなくなる
- 憎む
なぜ親は子を憎しみを抱くように育てるのか
- 社会のルールや規律を守ることが子供のためと信じている
- 子供の感情を直視して相手できない時がある(子を愛する能力に欠けている時がある)
- 信じる価値観や、それを守る良い親像を作るために「お前のためだ」と理由付けする
(権威主義的な親に育てられた)憎しみを抱いた子はどうなるか?
なぜドイツではナチスが支持を得たのか
- 権威主義的な教育(シュレーバー教育)がドイツで流行った
- 多くの子が憎しみを抱くように育てられた
- (無意識に)憎しみを共有できる人が増えた
- 憎しみを肯定する(攻撃の理由付けをする)強いリーダーが求められた
シュレーバー教育は、本書に記載なし。以下を参照してください。
19世紀末、徹底的に子供をしつけるというシュレーバー教育がドイツで流行していた
感想
精神分析学一般の話として読むとピンときませんでした。 ドイツでナチスが流行った理由の分析として読むと興味深いです。
著者のアルノ・グリューンはドイツ生まれのユダヤ人です。 ナチス時代のドイツに住み、迫害を避けデンマーク経由でアメリカに亡命しました。 ドイツを蔑んで(旧東ドイツでの極右団体による外国人排斥活動など)、アメリカを持ち上げる傾向があります*1。
訳者の方が心理学または精神分析学の人でなく、文学の方です。「自分の中の他人」や「親からのテロ」などの訳語が、心理学または精神分析学方面としてふさわしいのかよくわりません。個人的にはわかりにくいと感じました。
単著に見えますが、インタビューをまとめた本です。 体系化されているわけではないので、論理としてはわかりにく点があります。
そもそも古い本です。「権威主義的な教育を受け傷ついた青年が、オイディプスコンプレックスを解消するために、極右活動に参加する」というのは、少しステレオタイプな感じを受けます。 現代の精神分析学でどのような解釈をされているのか気になるところです。
経緯
「生きる技法」の参考文献
本当は「才能のある子のドラマ」を読もうと思ったのですが、その時あまり良い出品がなかったためこっちにしました。
「生きる技法」を読んだ理由
何年も前に羽生田栄一さんが串田幸江さんにオススメしているのを見て、アマゾンのWishlistに入れていました。 誕生日にもらったので読んでみました。
*1:アメリカにも、差別的な活動をする人は、それなりにいそうなものです